今日は、じんましんの出ない食物アレルギーの話をします。傷病名でいうと、そのまま食物アレルギーです。
この記事は、実際にうかがった事案をもとにしています。年齢は幅で、場所や日付は書きません。救急隊は診断をしません。書く傷病名は、あくまで現場で疑ったものです。
皮膚に出ないことが、あります(写真はイメージです)
先に、3つだけ
- 食物アレルギーは皮膚に出るとはかぎりません。消化器の症状だけのことがあります
- 同じ食べもので2回目なら、それは偶然ではありません
- 吐いた回数より、ぐったりしているか・顔色のほうが、受診の判断では重く見られています
1. 傷病名——疑われたのは「食物アレルギー」でした
0歳7か月の女の子。保育園の給食で豆腐を食べたあと、20回ほど吐きました。
私たちが着いたとき、お母さんに抱かれていました。呼びかけると目は開けますが、はっきりしません。無表情で、ぐったりしています。搬送の途中でも、胃液のようなものを1回吐きました。
けれど——発赤なし。皮疹なし。喘鳴(ゼーゼー)なし。咳もなし。呼吸の音は正常で、おなかも柔らかい。熱はありました。
お母さんの認識では、アレルギーは特にありません。
ただ、聞いていくうちに出てきたことがあります。2週間前にも、豆腐を食べたあとに顔面蒼白と下痢と嘔吐があった。
重症度は「緊急」。小児救急に対応している病院へ運びました。
初めての食材は、家庭で先に(写真はイメージです)
2. 症状のサイン——皮膚に出るとはかぎりません
厚生労働省の事業として運営されているアレルギーポータルは、食物アレルギーの症状を臓器ごとに挙げています。消化器はこうです。
消化器:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、血便
そして重症度の説明には、この事案とそのまま重なる一文があります。
重症:全身症状があらわれ、強い腹痛や嘔吐を繰り返し、便失禁や、ぐったりして意識を消失する場合があります。
「嘔吐を繰り返し」「ぐったりして」。皮膚のことは、ここに出てきません。
皮膚症状を伴わないタイプがあります
同じページには、新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症(しんせいじ・にゅうじ・しょくもつたんぱくゆうはつ・いちょうしょう)という、聞き慣れない名前のタイプが説明されています。
即時型アレルギーのような蕁麻疹や呼吸困難などの症状は通常みられません。
そして——
食後数時間で激しい嘔吐を繰り返す急性型
じんましんが出ない。呼吸も苦しくならない。ただ、吐く。そういう形が、乳児にはあるということです。
ただし、この事案がそのタイプだったかどうかは書けません。病型を決めるのは、検査を含めた医師の診断です。私たちが言えるのは、「皮膚に出ていないから食物アレルギーではない」とは言えない、というところまでです。
大豆は、表示が義務ではなく「推奨」の側です(写真はイメージです)
3. 避けるには・受診の判断
2回目には、意味があります
アレルギーポータルは、診断についてこう書いています。
特に、初めて口にする食べ物を食べたときに症状があらわれることが多く、食物アレルギーの場合はその後、同じ食べ物を食べるたびにくり返し症状があらわれるようになります。
この事案は、2週間前にも同じ豆腐で起きていました。
同じ食べものでもう一度同じことが起きたなら、それは体質のほうを疑う理由になります。「たまたま体調が悪かった」で片づけない——ここが、いちばん伝えたいところです。
ただし、家で試さないでください
同じページには、はっきりした注意も書かれています。
医師の指示なく保護者の判断で自宅などで試しに原因と疑われている食べ物を食べることは非常に危険なので、絶対にやめましょう。
確かめたい気持ちは自然ですが、確かめるのは病院です。
大豆は「表示が推奨」の側です
消費者庁のアレルギー表示では、表示が義務づけられているのは9品目——えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生です。大豆はここに入っていません。表示が推奨されている20品目のほうに入ります。
義務ではない、ということは、書かれていない商品があるということです。大豆は、醤油や味噌や豆乳など、いろいろな形で食卓に入ってきます。
「何を、どれくらい、何分後に」——それが診断の材料になります(写真はイメージです)
4. 家族へ
① 保育園に出す前に、家庭で2回
こども家庭庁の『保育所におけるアレルギー対応ガイドライン』には、基本原則としてこう書かれています。
家庭で食べたことのない食物は、基本的に保育所では提供しない
さらに具体的な記述もあります。
家庭において可能であれば2回以上、保育所で提供する量程度、もしくはそれ以上の量を食べて何ら症状が誘発されないことを確認した上で
「2回以上」。国のガイドラインが、そう書いています。
そして同じガイドラインは、診断がついていない子でも起こりうることを前提にしています。
食物アレルギーの診断がされていない子どもであっても、保育所において初めて食物アレルギーを発症することもある
「うちの子はアレルギーなし」は、まだ何も起きていないというだけのことがあります。
園と家庭で、食べたものを行き来させてください(写真はイメージです)
② 伝えるのは「何を、どれくらい、何分後に」
アレルギーポータルは、受診のときに伝えることを挙げています。
医師に相談する際には、何を、どれくらい食べて、何分後に、どのような症状があらわれたのかを伝えましょう。
吐いた回数も、数えられるなら数えておいてください。この事案では20回でした。回数は、そのまま重さの目安になります。
③ 見るのは回数より「ぐったり」と「顔色」
緊急性の高いアレルギー症状として、国のガイドラインは13の症状を挙げています。そのうち消化器の症状は2つ——「我慢できない腹痛」と「繰り返し吐き続ける」です。
そして13のうち、皮膚の症状は1つも入っていません。
全身の症状のほうには「ぐったり」「意識もうろう」が入っています。じんましんの有無ではなく、ぐったりしているか、顔色が悪いか。そちらを見てください。
「2回目」に気づけるのは、家族だけです(写真はイメージです)


